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「いや〜、晴れてよかったな〜。」
 空を見上げ、満面の笑顔でリュークが言った。
「天気予報じゃ雨だって言ってたのにね〜。あ、マリアポッキィ食べる?」
 と、ポッキィを片手にキッチェ。
「ありがと、キッチェちゃん。」
 と、ポッキィを受け取り、笑顔でマリア。
「それにしても、大勢でこうしてどこかに出かけるのって、何かいいですね。」
 マリアが後ろを振り返り、しみじみと呟いた。
 現在、鼻歌混じりに上機嫌で先陣を切るのはサンクルスのボス・リューク。
 その後ろにキッチェとマリアとダイダロスが横一列に続き、
 以下ダンボールマン、タイのキックボクサー、お突き様、半透明人間、うちわじじい…と、生物兵器の
面々がズラリと並んでいる。
 何故島民総出で出かけているのかというと…

「みんな、明日は花見に行こう!」
 いつもの広場で晩ご飯を食べている最中、リュークは一人立ち上がり、力強く宣言した。
「何でまた急に…?」
 当然の疑問。それに対するリュークの返事は。
「俺が行きたくなったから!」
 だった。
「………」
『花見自体はいいけど、行く理由がボスのわがままってのがな〜』的空気が流れ始める中、
「それ、いいですね。私、桜って見た事無いから…楽しみです。」
 とマリアが笑顔で一言。
 これがきっかけとなり、花見に出かけることで満場一致。
 …そんなわけで、現在リューク達一行は森の中を進行中。
「それにしてもこの島に桜なんてあったのか…」
 と、一人冷静に分析しているダイダロスが、ここであることに気づいた。
「ところでリューク…テイオーはどうしたんだ?」
「へ?」
 ダイダロスの一言に、一行は足を止めて辺りをキョロキョロと見渡し始めた。
「あれー?っかしーなー…。出発する時には確かにいたよな?」
 リュークの問いかけに『うん、うん』と頷く一同。
「リューク!あっ…あれ…!!」
 キッチェが道を外れた森の奥を指差した。一斉にそちらに視線が注がれる。
 その先には…
 真っ白のワンピースを纏い、何だか良く解らない花を全身に咲かせ、キラキラトーンを背負って、
首から“花の妖精”と書かれたプレートを下げたテイオーが立っていた。
 その場に崩れ落ちる一同。
「てめーそこで何やってんだー!!?」
 すかさずつっこむリューク。
「リューちゃん…今日はお花見でしょ…?」
 乙女の祈りポーズで語りかけるテイオー。
「そう…美しい花たる私を見てーーー!!!(はぁと)」
 絶叫と同時にもの凄い形相&もの凄いスピードでこちらへ突進してくるテイオー。
「きゃぁぁあぁ!?ちょ…ちょっとリューク、どうすんの!?」
 キッチェがリュークの肩にしがみついて尋ねる。
 こういうパターンには慣れているのか、リュークの対応は冷静だった。
「てめーは…」
 静かに右手に力を込めるリューク。
「あの世で咲いてろ!!!」
 絶妙のタイミングでアッパーを叩き込み、テイオーを空の彼方へと消し去ってしまった。
「さぁ!気を取り直して、次行くぞー!」
 そして何事も無かったようにその場を離れる一行。
 その一部始終を物陰からこっそり見つめていた人物がいたことを、彼等は知る由もなかったーーー…

 しりとりをしたり歌を唄ったりマジカルバナナをしたり、途中うっかりマリアに触れてしまったお突き様が
ダンボールマンの襲撃になったり、少々アクシデントもありつつ、一行は相変わらずわいわいと進んでいた。
 そんな中、ある疑問を口にした犬が一匹。
「ところで…ここにいる者は桜の事を知っていたのか?」
 ダイダロスが言うや否や、島民達はいっせいに首を横に振った。
「元ボスがこの島に桜の森っていうめちゃくちゃキレイな場所があるとは聞いてたけど」
「実際に見るのは始めて。」
 と、タイのキックボクサーとお突き様が説明してくれた。
「え?じゃぁキッチェちゃんも知らないの?」
 マリアが尋ねると、
「うん、私もおじさまから話は聞いてたけど、見た事はないの。あっ、でもリュークは見た事あるって!
 ね、リューク?」
 キッチェのその言葉に嫌な予感をたぎらせるダイダロス。
(ということは…桜のある場所を知っているのはリュークだけじゃないか!)
 そんなダイダロスの様子に気づかず、リュークはにこやかに返した。
「おぉっ!あの場所は親父と母さんの思い出の場所で…ガキの頃1回だけ連れてったもらったんだ。」
「ちょっと待て〜〜〜!!」
 最後の方の聞き捨てならない言葉にすかさず反応するダイダロス。
「な…何だよダイダロス?ここからがいいトコロなのに…」
 話の腰を折られ、不満そうに口を尖らせるリュークにダイダロスはたたみかける。
「それは…いつの話だ?」
 聞かれてしばし考え込むリューク。
「ん〜と…確かぁ……あの時だから〜…思い出した!俺が3歳の時だ!」
 リュークのその言葉に凍り付く一同。そしてこだまする絶叫。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
「な…何だよ、みんな!?」
 島民達のいきなりの態度にたじろぐボス。
「さては…俺が道を覚えてないと疑ってるな!?」
 首を縦に振る一同。
「俺の記憶力が信用できないというのか!!?」
 さっきよりも力強く首を縦に振る一同。
(くっ…完全に疑われている…どうする俺!?一体どうすれば…!!?)
 窮地に立たされるリューク。
 そんなリュークに助け舟を出したのは、以外にもダンボールマンだった。
「どうした、ダンボールマン?」
「あっ、これって!?」
 ダンボールマンは右手にみかん、左手に一片の花びらを携えて静かに佇んでいた。花びらはさっき拾ったらしい。
「この色…この形…紛れも無く桜の花弁だな!」
 ダイダロスの解説に一気にテンションが上がる一行。
「その“桜の森”とやらは近いな。」
「ごめんね、リューク。疑ったりして。」
 手のひらを返した住民達の態度にも、
「まぁ、わかればいいさ!」
 と余裕の表情のリューク。が、心の中では(あぶね〜!!!)とヒヤヒヤしていたのであった。
 そしてなだらかな上り坂を歩く事約5分…
 森が途切れ、前方にうっすらと淡いピンクのシルエットが見え出した。
「着いたぞ!ここが親父と母さんの思い出の場し…」
 ズガガガガガッ!
 嬉々として説明し出したリュークの言葉を、銃声が遮る。
「うっ、うわ〜〜〜!?何だ何だ!!?」
 奇妙なポーズで器用に弾丸の雨を躱すと、リュークは弾が飛んできた方向を睨み付けた。
「遅かったなリューク!!!」
「!!お前は…」
 勝ち誇った表情で丘の上に立っていたのは、アレックスだった。
「アレックス!?何でこんな所に…!?」
「うちの優秀な工作員が報告してくれたのさ…それはついさっきの事…」

「お頭、大変です!」
「どうした、特殊工作員!」
 デッキチェアに寝転び、カナメの書を読みながらくつろいでいたアレックスの元に、
 全身葉っぱまみれの特殊工作員が帰還した。
 そう、森の中でリューク達のやりとりを監視していたのは、アトランティスの特殊工作員だった。
「やつら……花見に…行く模様です!」
「何ィっ!?」
 アレックスは飛びおきると思いっきり声を上げた。と、思うと急に静かになった。
「…花見ってなんだ?」
 17年間海の上で育ったアレックスは、花見がどういうものか知らなかった。
(大丈夫かこの人…?)
 と内心思いつつ、丁寧に花見とはどういうものか説明する工作員。
「あいつら…俺に黙ってそんな楽しいことしようとしてたのか…」
 小刻みに震えて怒りを露にするアレックス。
「許さん!俺達も花見を楽しむぞ!用意をしろ、工作員!」
「へぃっ、お頭!」

「…と、いうわけだ。」
 リュークの問いかけに丁寧に解説してくれるアレックス。
「何だ、お前も花見したかったのか。じゃあ一緒に…」
「うるさ〜〜〜〜い!!!」
 握手を求めて差し出されたリュークの右手を、弾丸がかすめた。
「んわ〜〜〜!?今、当たっ、し…し、死〜〜〜〜!!?」
「落ち着け、リューク!かすり傷だ!!」
 慌てふためくボスを島民が一丸となって静める。
「ひどいじゃない、アレックス!」
「そうだそうだ!」
「何もここまでしなくても…」
 次々と浴びせられる非難の声を、アレックスは決意を込めた叫びで退けた。
「え〜〜〜い、静まれぇっ!!!」
 の、一言に、ピタッと静まる素直な一同。
「何故…俺様に声をかけなかった…?」
 俯き、絞り出すように問い掛けるアレックス。
「は?」
 アレックスの意外な言葉にポカンと口を開けるリューク。
「あのサバイバルバトルで…!カナメとミノルがかつてそうであったように…!俺とお前は親友(と
 書いて“とも”と読む)になれたと思った…
 それなのに…それなのに…!!お前というやつは…俺を無視しやがって…
 寂しかったじゃないかこのヤロ〜〜〜〜〜!!!」
 アレックスは滝のように涙を流しながら絶叫した。崩れ落ちる一同。
「泣くな〜〜〜っ!!!」
 リュークから当然のツッコミが入る。
「お頭しっかり!」
「みっともないですぜ、お頭!」
「ぶっちゃけ過ぎです、お頭!」
 工作員の激励(?)に、何とか落ち着きを取り戻すと、アレックスはわざとらしい咳払いをし、
「そういうわけでだ!俺様を無視した罰として、貴様らに花見はさせん!!!」
 と、続けた。
「ちょっと〜、花見したいなら一緒にすればいいじゃない!」
「そうですよ、無意味な対立なんてやめましょう!」
 キッチェとマリアの至極真っ当な反論に、思わずたじろぐアレックス。が、すぐに態勢を立て直した。
「すまないキッチェ…マリアちゃん…。本当なら俺様もこんなことはしたくない!が、やると決めたからには
 やり遂げる!それが“男”ってやつなんだ、わかってくれ!
 工作員!!」
 アレックスの合図でいっせいに銃を構える工作員達。
「ちょ…ちょっと待て…」
「う…嘘でしょ〜〜!?」
「攻撃開始!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ〜〜〜!!」
「たっ…退避だ〜〜〜〜!!」
 ボスの叫びをきっかけに、島民達は森の中に身を潜めた。
「ふっ…他愛も無ぇ…」
 その様子を見て勝利の笑みを浮かべるアレックス。
「さぁ、花見するぞ〜!」
「お頭…本当にこれでよかったんですか?素直に“花見混ぜて”って言えば…」
「うるさい!今更…そんな事できるか!!さぁ、さっさと準備をしろ!!」
 モヤモヤする気分を払拭させるように、アレックスは一際大きな声で叫んだ。

 一方、リューク達は森の中で作戦会議を開いていた。
「駄目だリューク!あいつら、ずっと丘のてっぺんで見張ってる!」
 偵察から戻ってきたタイのキックボクサーと半透明人間が現状を報告した。
「そうか…」
「ねぇ、リューク。すごく理不尽ですけど、リュークが謝れば丸く納まるような…」
 マリアの良案を、リュークは一言「やだ!」と退けた。
(くっ…何てワガママ…!!)
 マリアを除く島民達が、同時に心の中でそう思った。
「リュークもアレックスも変な所で頑固だからな…」
 ダイダロスが大きな溜息をついた。
「でも本当どうします?せっかくここまで来たのに…」
「う〜〜〜〜ん…」
 と、唸る一行。
「どうやらお困りのようね!」
 聞き覚えのある声に、ハッ、と後ろを振り返ると、神々しい後光を背に、花の妖精(つまるところドーカイ
テイオー)が仁王立ちしていた。
「花の妖精さん!お願いします、もうあなただけが頼りなんです〜。」
 涙を流してテイオーに擦り寄るリュークに、
「あんたさっき、思いっきり吹っ飛ばしてたじゃないか!!!」
 と、ダイダロスのツッコミが飛ぶ。
「リューちゃん…やっと私の大切さがわかってくれたのね…。そんなリューちゃんに私からアドバイスよ…
 “目は口ほどに物を言う”」
 テイオーのとんちんかんな発言に、一同の頭上にクエスチョンマークが乱れ飛ぶ。
「もしかして…」
 と、ダイダロスがツッコミを入れる前に、リュークが何か閃いたようで、
「はっ、そうか!ありがとう、花の妖精!!」
 と、テイオーの手を握った。そしてそのまま島民達の方に振り返り、
「行くぞ、皆のもの!」
 と叫んでテイオーを連れてダッシュした。
「ちょっ…待ってよ、リューク!」
 リュークの突然の行動に混乱しつつも、島民達は後を追った。

「お頭〜、こっち来て一緒に呑みましょうよ〜」
「未成年に酒を勧めるな、バカ者。」
「だ〜い丈夫ですって。これ、カルピスですから。」
「じゃ何で酔っ払ってんだお前ら〜〜〜〜!!?」
 和気あいあいと酔いつぶれる工作員を横目に、一人ピリピリムードのアレックス。
「全く……おいっ!」
 アレックスは桜の咲く広場の入り口の守りを固める工作員の元に歩み寄った。
「奴らの様子はどうだ?」
「…………。」
 しかし工作員達は神妙な面持ちで、ピクリとも動かない。
「ん?おい!!どうした!?何があった!?」
 アレックスが工作員の肩をゆさぶると…
「ぐ〜〜〜〜〜」
 景気の良いいびきがこだました。
「寝るな〜〜〜〜〜〜!!!」
 アレックスの怒号で目を覚ます工作員。
「はっ!すいません、お頭!」
「うっかり春のぽかぽか陽気にやられたようで…」
「やつら思った以上に強敵です!」
「アホか〜〜〜〜〜〜!!!」
「お頭!」
「今度は何だ!!?」
「敵襲です!!」
「何ィッ!?」
 慌てて丘の下方をみやると、バトルモードとなったテイオーが、鬼のような形相で、「アチョォォォォォ」と
雄々しい雄たけびをあげながら(ただし、衣装は花のよう精のまま)こちらに突っ込んできている。
「ええい、ひるむな!迎撃しろ!」
 命令が下っても、なかなか撃とうとしない工作員達。
「だ…駄目ですお頭!」
「そうですお頭!」
「軍人があんな馬に怖じ気づいてどうする!?」
「でもお頭…俺達にはあんな可憐な花の妖精を撃つなんてできません!!!」
 涙ながらに訴える工作員達に、
「貴様ら、アホか〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 と、最大級の怒号が飛んだ。

「どうやら向こうは仲間割れしてるみたいだな!」
 テイオーの少し後方を走るリュークが、ニヤリと笑った。
「兵器に対して兵器をぶつける!これぞ『テイオーが目に入ったらきっと色んな意味で痛いゾ作戦』!」
 自信満々に語るリュークの横で、ダイダロスが呆れ顔で、
「色々間違っているが・・・まぁいいか」
 と呟いた。
「よし、トドメだ!ダンボールマン、GOッ!!!」
 リュークの掛け声に、ダンボールマンのみかんバズーカ(仮称)が火を吹く。
「ぎゃぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!」
 広場の入り口を守っていた工作員達は、派手に吹っ飛ばされた。
「くそっ!」
 かろうじて被弾を免れたアレックスが態勢を整えた時には、リューク達はもう広場に到着していた。
「観念しろアレックス!テメーの悪事もここまでだ!!!」
吟遊詩人【一体何者だ、アンタ!?】
「くっ…」
 一人焦りの色を浮かべるアレックスの後ろで、緊張感の無い声が飛ぶ。
「あ〜、リュークさん。お久しぶりっす!」
 工作員のなごやかな声に、リュークも笑顔で応える。
「お〜、お前ら!元気にしてたか?」
「ハイ、おかげさまで…。リュークさんも一杯どうですか?」
「あ〜、俺は酒はちょっと…」
「大丈夫ですよ〜これお酒じゃなくてカ」
「そのボケはもういい!!」
「な〜に、カリカリしちゃってんの、アレックス?」
 ちゃっかり近くの桜の木の下を陣取り、花見モードに突入していたキッチェが呆れ顔で指摘した。
「そうですよ、意地はらずに、一緒に楽しみましょう。こんなに桜がキレイなんですから…」
 女性陣2人の口撃に、またもたじろぐアレックス。
(確かに俺様も大人げない。が、ああ言った手前もう引くに引けねぇ・・・)
 一人悶々と葛藤するアレックスの目に、工作員達と盛り上がるリュークの姿が飛び込んできた。
「くそっ!こんな事になったのも・・・」
 半ばヤケになっていた。
「全部貴様のせいだ〜〜〜〜!!!」
 銃を構えるアレックス。それに気づいたリュークが素早く立ちはだかった。
「待て、アレックス!撃たないでくれ!!頼む!!!」
 いつになく真剣な表情のリュークに、その場にいた全員が息を呑んだ。
「ここは…この場所は…親父が母さんにプロポーズした、思い出の場所なんだ!」
 リュークの告白に、「えっ」という表情を浮かべる一同。

 その時、一陣の風が、場をさらった。
 ザワザワと桜がゆれ、やがて花びらがいっせいに散った。
 時が止まったようだった。
 スローモーションで中を舞い踊る薄紅の花、花、花、花ーーー…

「キレイ…」
「あぁ…本当に…」
 全員、空を見上げて感嘆の声を漏らした。桜吹雪はなおをやむ事無く、辺りを包み続けている。
「ちっ…」
 舌打ちがした方に全員が向き直った。アレックスは俯いたまま、自嘲気味に喋り出した。
「全く…俺様とした事が何こんな事でムキになってんだか…」
 ここでアレックスは顔を上げた。笑顔だった。
「一緒に…花見しようゼ…!」
「あぁ…俺も悪かった…ゴメンな、アレックス!」
 2人が固い握手を交すと、歓声が巻き起こった。
 その日、宴会は夜通し続くのであったーーー。


 そして翌日。
「あ〜…頭痛ぇ…」
「本当に…」
「気持ち悪い〜…」
「何で…カルピスで酔うんだ?」
 宴会に出席した全員が、二日酔いに苦しんでいた。
吟遊詩人【あんまりハメをはずさないよう、節度を守って楽しい花見を!】


終わり。